[コラム]世界一周船の旅<2>(北1地区 久保田尚子)
第一話では、横浜を出てスエズ運河までのお話をいたしましたが、私たちの船は西廻りで、さらに航海を続けました。経度は、15度進むと時刻は1時間もどります。そのため経路にもよりますが、数日に1回は時差調整があり、1日が25時間になるわけです。ですから西廻りは体にやさしいのです。
ヨーロッパではサマータイムを導入している国も多く、さらに時差調整は複雑になります。時差調整のある日は船内新聞で知らされ、寝る前に時計の針を戻したり、進めたりと忙しいです。これを忘れると次の日は悲惨な目に会うのです。大方の人が1回くらいは経験していると思います。このようにして時差調整を繰り返してハワイを出港して日付変更線を通過すると1日なくなっているのです。(写真をクリックすると拡大します)
今回の船旅で私が1番楽しみにしていた国はアイスランドです。今では地震のたびにテレビなどで地球のプレートの話が出てきますのでご存知の方も多いと思いますが、地球表面は十数枚のプレートにおおわれています。あるものは海溝から地球内部へ沈み込み、あるものはぶつかり合って、せりあがったりして地球表面に隙間が出来ます。そこへ新しいマグマが地球内部から噴き出してきて新しい地殻を作ります。
その現場は海嶺(かいれい)とよばれる海の中にある山脈で、そのほとんどは大洋の真ん中にあります。その為、現場をなかなか目にすることができないのですが、アイスランドの上に海嶺が乗りあげているため、世界で唯一、ここでは”地殻が出来ていく現場”を見ることが出来るのです。
今回、私は北米プレートとユーラシアプレートの裂け目“ギャオ”と呼ばれる地溝帯を歩きました。プレートとギャオの境目は10数メートルの断崖絶壁。その迫力に圧倒されました。“ギャオ(gyao)”は、アイスランド語で「大地の裂け目」を意味します。このギャオが年に2cmくらいづつ広がり、北米プレートとユーラシアプレートが離れていくわけですから道路の補修が、さぞ大変だろうとバスガイドさんに尋ねたところ、「世界中から来る観光客を乗せた大型バスによって傷んだ道路を補修する方が大変です。」と云われてしまいました。
ギャオだけでなく火山国であるアイスランドは間欠泉や氷河が造ったフィヨルド、ギャオへ流れ込む勇壮な滝など見どころはたっぷりです。
オーロラも気象条件に恵まれれば素晴らしいものが見られるはずでした。しかし、アイスランド周辺の4日間のチャンスにもかかわらず、私たちは、とびきり素晴らしいオーロラには会えませんでした。
北緯65度近辺の冬の大西洋上で、真夜中、オーロラが発生し始めると船内アナウンスがありました。あわてて防寒具に身を包み10階のデッキに駆け上がったのですが、ものすごい強風の中、死にそうな思いをして待っていても、なかなか図鑑で見るようなオーロラは現れません。かすかに雲が緑色に染まる程度です。私たちがアイスランドを去った3日後に、知りあいの人がレイキャビークの教会の前でとった素晴らしいオーロラの写真を送ってくれました。(続く)
⇒ 世界一周船の旅<3>へ https://tankenkobo.com/wp/2019/06/07/worldtravel3/