[コラム]台湾のジオパーク「野柳地質公園」の奇岩のお話(藤巻 和美)
去年(2018年)の夏に台湾のジオパークに行ってきました。そこで見た不思議な奇岩が予想以上におもしろいものでした。この奇岩や地層について、いろいろと調べましたのでお読みください。(2019年1月21日 たんけん工房 藤巻 和美)
■ 台湾のジオパークって何?
台湾のジオパークを知っていますか。野柳(やりゅう)地質公園は、台湾の北部先端にある細長い野柳岬にあります。台北から車で約1時間。ここでは、雨、海水、波、日射、風などに長い長い年月の間さらされてできた様々な奇岩を見ることができます。
奇岩といえばトルコのカッパドキアが有名ですが、規模はかなわずとも、その種類は多く、それぞれの岩がキャラクターにもなっていて、探しに行くときのわくわく感、出合ったときの感動と驚き、その成り立ちについて沸いてくる興味と疑問などなど、元リケジョには大満足の観光地でありました。
■ 有名な奇岩「女王頭(クイーンズヘッド)」
園内で最も有名な岩は「女王頭(クイーンズヘッド)」と呼ばれ、見事にエリザベス女王の頭のような形をしていて、確かに気品さえ感じられます。しかし、首の部分が年々細くなってきており、近い将来崩れてしまうことが予想されているそうです。
他にも、「燭台石」、「キノコ岩」、「豆腐岩」、「アイスクリーム岩」、「サンダル岩」、「地球石」など、おもしろい名前のついた奇岩がたくさんありましたが、途中から日をさえぎるものが全くなくなり、台湾の夏はあまりに過酷で全てを見学できなかったのがとても残念でした。
また、奇岩だけでなく、風化によってつくられる美しい模様が特徴の風化紋やウニなどの化石も見ることができます。歩いていると普通に足元に化石があったりして、注意していないと踏みつけてしまいそうになりますよ。
■ これらの奇岩はどのようにして出来たのでしょうか?
さて、これらの奇岩たち、どうしてこんな形ができたのでしょうか。調べてみると次のようなことが分かりました。
野柳の地層は主に傾いた層状の堆積岩で構成されています。その岩層を切ってみると、三層に分かれています。一層目は、上部がカルシウムを含んだ砂岩と下部が黄土色の砂岩からなり、二層目は、上部が不規則な砂岩と下部が黄土色の砂岩からなり、三層目は、球状の塊を含む砂岩から成り立っているそうです。
貝殻など炭酸カルシウムを含んだ硬い層(石灰岩などの層)と堆積した砂からなるもろい層(砂岩の層)では、当然硬い層が残り、もろい層が速く風化されていきます。石灰岩は比較的風化されにくく、山脈の高いピークや大きな山となっている場合が多いようです。エベレストやアイガーも石灰岩でできているそうです。ただし、石灰岩は風化されにくいが溶食されやすい性質もあるようです。
溶食とは、炭酸カルシウムが炭酸ガスを含んだ雨水、河川、地下水などにより徐々に分解、溶解されることをいいます。また、硬い成分を含んだ塊が核となり、海水によって繰り返し何度も転がるうちに底を丸く削っていった形のものもあります。このように、地層に含まれる物質や成分の違いによって風化や侵食のされ方が変わり、様々な形ができたのです。
■ 子どもたちが地層を学ぶための絶好の教材
小学校では、5年生で流れる水の働きについて学習し、6年生で地層について学習します。地層はどのようにできたか、泥、砂、礫が堆積する様子を調べたり、火山についても学びます。たいてい、いつも地味な実験になってしまいますが(堆積を再現するのって無理がある~。もちろん噴火も。)、野柳のような奇岩を目にしたら、きっと子どもたちにもっと興味を持ってもらえるのではないかと思いました。
今度、台湾に行く機会がありましたら、自然がつくった芸術作品を、ぜひ、見に行ってみてください。「女王頭(クイーンズヘッド)」の首が崩れる前に。
【参考】
・野柳地質公園(ホームページ)
・野柳風景特定区(ウイキペディア)
・溶食とは(コトバンク)