出会いと草創、3つの提言(木村 貞雄)

・安田さんとの出会い
安田さんとは、50年ほど前に、彼がソニーの人材開発室に居り、私がテープレコーダーのデバイスの開発・製造の部門を担当をしていて、人材発掘について意見交換したのが始まりです。退職後はお互いに自宅が近いこともあり、旅行、囲碁などでも親しくお付き合いいただきました。おもしろ科学たんけん工房が発足してから5年ほど監事を引き受けました。

・安田さんの構想を聞いたときは
子ども達に科学の面白さを味わってもらいたいという、企業人とは別なものに後半の人生を傾けるという、私と違ったものがあるなと思い、お手伝いする気持ちもありましたが、一度は「およしなさい」といわせてもらいました。苦労することは分っていたし、敢えて苦労を掴み取るということは大変なことと思ったからです。 まず、どこから手をつけていいかわからなかったでしょうが、やはり一番苦労したのは、人材集めでしょうね。
それなりの能力があって、子どもたちを指導できる様な人たち10~20名の人材が揃わなければスタートできないでしょう。それも、ボランティアで。

・監事から見た草創期
私が監事を引き受けた5年間に、会員の数も増えるし、それにより、子ども達、先生方と直接触れ合う機会が多くなり、内容が充実してきたということが、目に見えました。また、安田さんが、多様なカルチャーを持った会員を上手く生かして、工房の組織・活動を纏め上げていったのは、なかなか出来る事ではなかったと思います。

・「認定NPO法人」の認定について
認定を取るということは、それなりの格になるものですから、やはり官庁関連に関してはそれが大きくものをいうのです。そのよう形態・組織にして、少しでも安田さんが動きやすいような環境づくりに、皆さんが協力してもらいたいものです。

・将来への3つの提言
一つは、「科学を見る目をどうやって養っていくか」です。それは、科学するといっても、物事や現象を目、耳など五感で感じ、どうしてなぜ、を考えるという習慣を、親なり周囲の人たちが動機付けをするかで、子どもが科学に対する目の開き方が違ってきますので、特に親御さんの姿勢が大切だと思います。

二つ目は、「人の心・気持ちなどを肌で感じる人間になってもらうこと」です。これは、思いやりのある心を育てることと、物に動じない心と言い換えてもよく、科学に関するものの見方と反対の領域にありますが、そういったものも、普段からどういった心掛け・ものの見方をしたらいいのかということを、折に触れ気づかせる必要があるのではないでしょうか。

三つ目は、「社会の仕組みを考えてもらうこと」です。小さい子は小さいなりに、社会の仕組みを考えることができる。家庭の中での仕組み、近隣での仕組み、学校での仕組み、社会での仕組み、そういったものがどういった状況になっているのか、ということは、科学をするとか人の心がどうとかいうと同じくらい重要なレベルであると、子ども達と接する時には、頭の隅に絶えず考えておかなければいけないことではないかという気がします。

以上のことを常に頭の片隅においてほしいということが、次世代と同時に、次世代の人たちを育てる人たちに対するお願いです。(元ソニー株式会社 木村 貞雄)