[コラム]かんたんおもちゃとカンボジアの子どもたち2(2019.2.10 島田 祥生)

昨年に続き、「スタディーツアー」に参加しました。内戦収束後も、政府の復興の手がいきわたらない、タイ国境に近い貧困地区の支援活動を行っている組織を日本から支援しているグループが、毎年実情把握のため出向いている活動です。前回は、状況がよくわからず、十分な準備ができなかったきらいがありました。

・当地の子どもたちに、いや、大人にも、かんたんおもちゃが役立ちそう。アイテムは?
・直接または間接的に、この活動にお役に立てることは何か。

これが宿題でしたが、想定以上にかんたんおもちゃには「魔力」がありました。

前回の報告書と合わせてお読みいただくと、よりご理解いただけるかと思います。

[コラム]かんたんおもちゃとカンボジアの子どもたち(2018.2 島田 祥生)

いくつかのアイテムを用意しましたが、完成品は嵩張るので、部品で持ち込み、メンバーの皆さんの手を借りて、夜、ホテルで組み立てました。皆さん、お疲れの中、慣れない作業を快く引き受けてもらえました。用意したのは、前回の「カリカリトンボ」、「ストロートンボ」、「フラッターリング」のほかに、「くるくるリング」300本、「とんでるインコ」150羽、それに、メンバーが持参してくれた「ブンブンゴマ」50個です。

「ホテル工房」でのくるくるリングの組み立て

とんでるインコ

■ 1月20日(日)
※プノンペンの「障がいのある子どもの家」
―くるくるリングを自分たちで作りたい!―
ここは、視覚、聴覚など身体に障がいがあり、貧しさゆえに親から見捨てられたりした子どもたち30人ほどが共同生活をしています。感謝と互助の気持ちをしっかり持った人懐っこい子どもたちでした。「くるくるリング」を全員にプレゼント。目が不自由な子は、耳元で回し、音と振動を楽しんでくれました。「ブンブンゴマ」は、コツをあっという間につかみ、ぶんぶん音が出るほどうまく回していました。

障害のある子どもの家」シスターに出迎えをうける

「ブンブンゴマ」が大気に入り

くるくるリングの「羽音」を作っている

その中の、耳が聞こえず目も不自由な子が、すぐに音を立てて回し、大変気に入った様子,食事の時も手放 そうとしませんでした。寄贈したアルトリコーダーを初見で吹いてくれた子がいます。昼食の時、隣り合わせになりました。「おもちゃで何が一番気に入った」と聞いたら、くるくるリングと答えてくれ、リングが回るしくみを即座に説明してくれました。このような子が、この国のリーダーの一人に育ってくれるといいなと、楽しみになりました。

アルトリコーダーを吹きこなす

帰り際に、この家を運営しているシスターが、「子どもたちが、『くるくるリングを、僕たちで作れる、作ってみよう』といっている。」と話してくれました。自力で作ってみるとのこと。つい、「来年を楽しみにしています。」と言ってしまいました。子どもたちと我々の間にあった、何となく入り込みにくい雰囲気が、手を取って遊び方を伝えたこともあってか、あっという間になくなり、別れ際まで、みんなが入り混じり、楽しい時間を過ごすことができました。

■ 1月21日(月)
※プノンペンのゴミ捨て場跡地とそこの住民へのサービス(JLMM浅野美幸さんの活動)
(JLMMの活動については右記URLでご覧ください。www.jlmm.net/hakenkoku/cambodia
―「とんでるインコ」に見事なデコ―
プノンペン郊外のごみ集積場跡地(満杯になったため、他に移設)
プノンペンのごみは集積場に野積みされ、そこから再生可能なものを拾い集めて生計を立てている。地方で喰い詰めた、文字も読めず人付き合いも慣れていない人々が集まる。浅野さんは、寄付を集め、そのような人々のよりどころとなる建物を作り、母親の教育(衛生、栄養など)・自立支援と、子どもたちへの教育(小学校の授業についていける基礎づくり)を精力的に行っている。今の建物の横に50名収容の保育所も完成し、もうすぐ開園する運びとのこと。子どもたちへの教育のための「学校」には、80名の子どもたちが来ています。

プノンペンのゴミ捨て場跡地

そこの子どもたちの一クラスには、「ストロートンボ」をプレゼントし、もう一クラスには、「とんでるインコ」にクレヨンでデコを楽しんでもらいました。「とんでるインコ」のデコは、みな楽しそうに、真剣に取り組んでいて、自由で豊かな創造性を垣間見ることができた。ゴミの山跡や、建物の案内を受けた30分ほど後でも、ストロートンボを楽しんでいる光景が、今も目に焼き付いています。

先生にちょっと教えてもらっています

ストロートンボにご満悦

みんな夢中で飛ばしている

なかなかいいセンス

■ 1月22日(火)
※いよいよシソポンへ、JSCシソポン事務所に行き、プロジェクトの説明を受ける
―会った途端、「今度はどんなおもちゃを持ってきてくれた?」―
・カンボジアの北西隅にあるBanteay Meanchey県(島根県ほどの広さ)をスタッフ6名でカバーしている。
・支援内容は、車椅子、家、トイレ、スモールローン、牛、教室、自転車、奨学金と多岐に亘っている。
・今年は、3地域に集中して活動を行う方針とのこと。
・村々を回り、村長らに会い、支援者への手厚いフォローを精力的にこなしている。
・単なる同情ではなく、将来が少しでも見えるように、そしてその家族の周りの人々にも励みとなるように、施策を工夫している様子がよくわかった。

シソポンの事務所 前任の所長さんが丹精した緑

■ 1月23日(水)
※「車いす」の提供を受けた家族
―自分の行きたいところに自力で行ける!―
ポリオで下半身が不自由になった少年。車いすで行動範囲が広くなったと喜んでいた。くるくるリングをプレゼント。初めは戸惑っていたがすぐ回せるように。妹もストロートロンボーンを吹いてくれた。

くるくるリングを不思議そうに

黄色い服の妹さんにストロートロンボーンをプレゼント

※Kobthom Secondary School
―7学年2クラス、8学年1クラス、9学年1クラスの小さな中学校―
自転車の提供を受けた生徒にフラッターリングをプレゼント、うち一人は、電気技術者志望とのこと。不思議そうに、何度も何度もひっくり返して眺めていた。先生(右端)にくるくるリングをプレゼントすればよかったナ。

生徒にフラッターリングをプレゼント

Kobthom Secondary School

■ 1月24日(木)
※Bossthom村の「カウバンク」で支援している家族
―壊した「インコ」をお姉ちゃんが直してくれた―
雌牛を提供し、最初の子牛はJSCに、2頭目は自分のもの、3頭目はJSC、その後は母牛ともに自分のものという仕組み。牛の飼育に長けていて牧草地の手入れも丁寧。ほかに2頭の牛の世話を頼まれている。やる気のある家族への支援の見本。子どもたちに「とんでるインコ」をプレゼント。末っ子があっという間に壊し、水色の服の娘が直してあげていた。この娘とは小学校で再会した。

カウバンクで提供を受けた牛の世話をする

子どもたちのおやつは庭になっているマンゴー

※Bossthom村の小学校
―150本のくるくるリングが青空に輝いてー
360名の児童がいる小学校で、先生が足りないため2部授業をしている。成績優秀な遠方通学の子に自転車を提供している。昨年は、その子らにだけカリカリトンボを渡し、手持ちの80本を校長先生に託さなかったと後悔。今回は、十分な数を用意し、渡し方は校長先生にお任せした。午前中の子ども達にくるくるリングを渡してくれた。150本のくるくるリングが青空に映えて壮観!

小学校でくるくるリング

成績優秀な子に自転車を提供している

今年のプレゼント 袋の中は くるくるリング150本

右端の子は、カウバンクの家庭の娘

我々の運転手さん くるくるリングを手に

※Bossthom村の小学校の校長先生
―SRI(System of Rice Intensification:コメの収量を増やす農法)のリーダー ―
水田直播から、苗の条植えにより収量2倍になった。地域に尊敬されている校長先生が率先して、校庭に続く水田で実証している。近くの若夫婦が、スモールローンで40m四方の水田でこの農法にチャレンジし、実績を上げている。努力すれば報われることが近隣に徐々に浸透し、15家族が取り組み始めているとのこと。

校庭に隣接した田んぼ、雨季の5月には田植えが始まる

■ 1月25日(金)
※シソポン教会のグレッグ神父とCommunity learning houseへ
―「とんでるインコ」のデコに夢中―
村の集会所兼学齢前の子ども達の教室。30人くらいの子ども達が集まってきた。「とんでるインコ」を手渡した。最初は塗りかたがわからず、先生に塗り方を教えてもらっていたが、すぐ慣れて大胆なデコをしていた。

先生に手を取って教えてもらって

Learning houseの前でグレック神父と歓談中

隣の部屋は、母親たちの集会所。寄付の手芸の材料を使いアクセサリーなどを作っている。ミシンの1台が壊れていた。昨日壊れたとか。足踏み板とクランクをつないでいるバーが入るネジ穴がすり減っていた。お手上げ、と思っていたら、我々の運転手さんがアルミ缶の切れ端をネジ穴にかませて直してしまった。車の故障も殆ど自分で直すのだろう。Good Job!!
翌日、彼のfamilyの坊や3人にくるくるリングをプレゼント。

※JSCシソポン事務所のメンバーとお別れの昼食会
―かんたんおもちゃを訪問活動のツールに―
お世話になった事務所のメンバーと、お別れの時になりました。3日間の訪問で、かんたんおもちゃが相手との距離をぐっと縮めていたことに気が付きました。車いす、カウバンク、家、スモールローンなどなどの訪問時は、我々ツアーメンバーからよりむしろスタッフから手渡した方が自然ではなかったか。「ホテル工房」で、持参した部品を一気に組み上げ、事務所にプレゼントしました。くるくるリング80本、カリカリトンボ、ストロートンボ、フラッターリング、とんでるインコ・・・。スタッフの一人が言ってくれました。「次は、自分たちで組み立ててみますョ。」

JSCシソポン事務所のメンバーとお別れの昼食会

■ 1月26日(土)
※シエムレアプのJSC事務所
―チャンナレットさんに再会。くるくるリングの追加をご所望―
最終日は、シエムレアプのJSCの宿泊施設にお世話になりました。一泊$7。この宿泊費で、事務所の経費を賄っているそうです。車から宿泊施設への途中で、チャンナレットさんに出会いました。くるくるリングを 1本プレゼントしたら、若いメンバーが5人いるので、みんなに渡したいと言われました。嬉しかったけれど、手持ちはあと1本。それを渡して「ゴメンナサイ」。夕方、小さい子が楽しそうに回していました。予備を残しておくべきものだと、後悔しきりです。これで残ったのは、くるくるリングのリボン各50本と小部品だけ。きれいに使い切りました。シエムレアプの活動拠点の責任者Sr.デニース、JSCシエムレアプ事務所の責任者のスレイモンさんと歓談。スレイモンさんは、カンボジアの難民としてタイのキャンプに収容されたとき、Sr.デニースに見いだされたとのこと。9人のお孫さんがいます。くるくるリングをプレゼントしたかった!!

宿泊した部屋

チャンナレットさん(昨年の写真)

■ 今回のまとめ
―かんたんおもちゃは想像以上のもの。またまた宿題が出ました―
今回宿題だった
*当地の子どもたちに、いや、大人にも、かんたんおもちゃが役立ちそう。アイテムは?:
・いずれのアイテムも、おもしろい、どうなっているのかなど、興味を掻き立てることができた。
・子ども達は、どうしたら動かせるか、どう塗ろうかなど、知らず知らずに工夫していた。
・出来ないだろうと思っていた子が、楽々と動かしたのには感激した。子どもってすごい。
・くるくるリングを自分たちで作りたいと言ってくれたのは、想定外のうれしさ。
・これらは、大人も、子ども達と変わらないことが分かった。

*直接または間接的に、この活動にお役に立てることは何か。:
・子ども達との「スキンシップ」に役立った。特にブンブンゴマ、くるくるリングは抜群であった。
・小さな教室では、子ども達の創造の時間となっていた。材料の提供は、ありがたかったようだ。
・スタッフの活動では、先方との垣根を取り除くツールとなりそう。
・次回の組み立ては自分たちでしてみるとのこと。これで、相手の心にさらに踏み込めそうです。

■ 次回の宿題
―さらに一歩進んで―
*動かすのに、より工夫してもらいたい、よりスキンシップがしたい。
*デコに加えて、組み立ての楽しさも味わってもらいたい。

今回のツアーはみなさんのお蔭で、楽しい実りあるものになりました。お疲れの中の「強制労働」で、申し訳なかった気持ちもチョッピリあります。でも、子ども達の笑顔でご容赦ください。次回のプノンペン分は、組み立てて持ち込もうかと思っています。

■ 余談の余談
―プノンペンからシエムレアブへの機内で―
プノンペン空港の売店で買った$7.5の「Asian Vegetables」を手に機内へ。着席してすぐに、「カンボジアの野菜に興味がおありですか。」と、隣席から声をかけられました。6名ほどのご婦人一行をカンボジアの農園視察に案内して回り、旅の仕上げにアンコールワットを訪れるとのこと。一つ一つ説明してくれました。これはおいしい、これはえぐい、これはカンボジアのよりベトナムのがおいしい、これは生のままかじってビールに合い大好き、このレンコンの葉っぱの細い茎が絶品、キャッサバのイモ(タピオカの原料)は蒸かして食べるとおいしい、などなど、やけに詳しい。こちらで農園を経営しているとか、どうりで。キャッサバは、土の手入れをしないで連作すると5年で雑草も生えなくなるほど地味がやせるそうです。

Asian Vegetables

自然、カンボジアのコショウの話になりました。カンボジアのコショウは、味・品質で有名だったが、ポルポト時代に手入れがされず絶滅。と思っていたら、南西部の小さな湾の小高い丘にある農園にかろうじて残っていたそうです。カンボジア種は水やりや病気などに手がかかり育てにくいとか。ベトナム種は3年で実がつくが、カンボジア種は5年かかる。自然、ベトナム種を育てる農園が多く、出回っているのは殆どがそれとのこと。20数年前にその農園の木を見つけて「これだ」と栽培に力を入れ、世界一美味しいカンボジアのコショウに育て上げたのが、隣席の倉田浩伸さんその人でした。もの腰の柔らかい50ちょっと前の「すてきなおとな」。シエムレアプまでの45分間があっという間。別れ際、ポシェットから黒光りするミルが顔を出しているのが印象的でした。教えてもらった店で買いました。勿体なくて、なかなか封が切れないでいます。
http://www.chunichi.co.jp/article/feature/anohito/list/CK2017081802000233.htmlを覗いてみてください。

カンボジアのコショウ

そうそう、今回の旅の目的を聞かれました。かんたんおもちゃについて、「それは大変すばらしく、うれしいことです。」と言ってくれました。

以上

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です